業務改善の最初の一歩は、現場の「これ変えたい!」~院内に潜む「ブルシット・ジョブ」をAIやRPAで整理する~

はじめに
病院全体の流れを支える事務部門では、毎日の定型業務が積み重なり、正確に、そして急いで進めることが当たり前になりがちです。ですが、そんな日々の中でも、ふと「これ、なんのためにやっているのだろう?」と疑問が浮かぶ瞬間があります。
実は、その小さな直感こそ業務改善のスタートラインです。
そのような違和感の背景には、いわゆる「ブルシット・ジョブ」──やっても価値が見えにくい仕事──が潜んでいるケースがあります。明確な目的やゴールがないまま習慣として続けられている作業は、それ自体が改善すべき課題である可能性が高いのです。
手放すべき仕事を見つけ、本来行うべき業務に時間を取り戻す手段として、AIやRPAが注目されています。この記事では、現場に潜むブルシット・ジョブをどのように見つけ、どこから改善を始めるか、そしてAIやRPAがその一歩をどう支援できるのかを説明します。
「ブルシット・ジョブ」は院内にも潜む
「ブルシット・ジョブ」をご存じですか。働く本人でさえ「これって本当に意味あるの」と思ってしまい、本人が存在意義を見出せない仕事を指す言葉で、提唱したアメリカの人類学者であるデヴィッド・グレーバーはその例として、以下の5分類を挙げています。
- 取り巻き
誰かを偉そうに見せたり、偉そうな気分を味合わせたりするためにある仕事 - 脅し屋
他人を脅したり、欺いたり、圧力をかける目的の仕事 - 尻ぬぐい
組織が行った業務の欠陥を取り繕うためにある仕事 - 書類の穴埋め
実態の伴わない「形式上の達成」を示すための仕事 - タスクマスター
他人に仕事を割り当てるだけの仕事、管理職やマネジメント層
グレーバーの著書『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』(2020 岩波書店)は、社会構造がブルシット・ジョブを生み出すと論じた学術的な内容でしたが、その過激なタイトルが欧米主要メディアで取り上げられ、瞬く間に世界中で話題になりました。
日本では、働き方改革によって「働く」ことと向きあう流れが生まれ始めたタイミングだったこともあり、日本の職場文化と結びつけながら「やめればいいのに続いてしまう仕事」として、実務寄りの文脈で語られています。

電子カルテが普及してデジタル化が進んだ医療現場。以前よりずっと効率的に運営されているように見えます。しかし現実には、「この作業、なぜ手作業のままなのだろう?」「作成したデータは本当に活用されているの?」という場面がまだ残っているのではないでしょうか。目的が曖昧な書類づくりや形だけの調整作業など、ブルシット・ジョブに該当しそうな仕事を周りで見かけませんか。
自動化できるものはAIやRPAに
急速に普及し始めたAIやRPAが、データの転記や照合の自動化や資料作成の下書き、期限管理などの作業を支援するようになり、業務の負担を大きく減らしています。人が時間をかけていた事務作業の多くが自動化され、短時間で完了するようになりました。
AIやRPAは、仕事の意味を感じられないブルシット・ジョブを減らし、人が本来の仕事に集中できるようにするための支えとなります。グレーバーの分類のうち、①取り巻き、③尻ぬぐい、④書類穴埋め、⑤タスクマスターにあたる業務は特にAIやRPAが代替しやすい領域です。
業務改善は、現場の「これ変えたい!」から始まる
病院業界でも、AIやRPAといったデジタル技術の認知が近年急速に高まりつつあります。「うちの病院にも導入できないか」と関心を寄せる病院経営層の方々も増えています。
しかし、ここで重要なポイントなのは、AIやRPAに興味を持つこと自体は業務改善のスタートにはならないということ。デジタル技術を活かすには、まず「どこに課題があるのか」「現場で何を変えるべきなのか」が明確でなければなりません。課題が見えていなければ、どれほど高度な技術を導入しても成果は生まれません。
だからこそ、業務改善の最初の一歩は「現場の違和感」を理解すること。日々の業務に直接向き合っている現場こそ、改善すべき点を一番よく知っています。
「この確認、毎日やる必要あるかな?」「この資料、誰が活用しているのだろう?」
そんな素朴な疑問が、病院の働き方を変えるきっかけになります。
幹部の皆さんは現場の職員に対して、「その気づき、ぜひ教えてください」と声をかけてください。そのひと言が、業務改善の土台になります。

まとめ
転記、二重管理、不要な書類作成、意味の薄い会議、形だけのチェック──。こうしたブルシット・ジョブの多くをAIやRPAで整理できます。しかし、どこに課題が潜んでいるのか、何を変えるべきかの理解は、現場の気づきや問いかけからしか始まりません。
大事なことは、
- 「何かおかしくない?」と現場が言える雰囲気
- その違和感を歓迎し、拾い上げる文化や仕組み
- 小さな声に耳を傾ける幹部の姿勢
これらが整うと、AIやRPAは「現場の味方」として病院の業務を大きく変えてくれます。違和感を自覚し、それを拾い上げる力を養うことが業務改善の出発点です。
ユカリアのグループ会社である株式会社リメディカが病院向けに提供するBPOサービスは、AIやRPAを活用することで、業務の標準化と最適化を支援します。ぜひこの機会にお問い合わせください。
